あんまり求人で見ることのないレアバイト。「着ぐるみ士」
その名の通りきぐるみを着て、レジャーランドやショッピングモールで歩いてたりスタッフのお手伝いをしていますよね。見かけたこともあるかと思います。
そんな着ぐるみ士ですが、夏はサウナのように暑く、冬は寒い。
また着ぐるみ自体が重いので動くのも大変。。。
そんなデメリットだらけにみえるお仕事ですが、
今回お話をご紹介してくれた【たえ】様にとってはとてもやりがいのあるお仕事だったそうです。
丁寧に詳細まで教えて頂きました。体験談をご紹介します。
雇用形態 | アルバイト |
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勤務地 |
兵庫県神戸市
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勤務時間 |
土日の9:00~20:00
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休日 |
月~金
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給料 |
時給930円
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必要資格 |
なし
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業種 |
サービス業
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主な業務内容 |
きぐるみ士
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始めたきっかけ
着ぐるみを1度着てみたかったという願望と、自分の顔を伏せて働ける部分にメリットを感じ始めました。当時は学生でしたから、時給もそこそこ魅力的でした。
1日の仕事内容
主にはショッピングモールの敷地内でチラシを配ったり、子どもたちに風船をあげたりするのが仕事でした。
売り場中央にある広場でイベントがあるときには、その手伝いとしてステージに上がることもあります。
そうしたイベントがある日には、事前の打ち合わせのため早めに出勤しなくてはいけません。最も早い日だと、朝の6時に出勤したこともありました。大型のショッピングモールだったため、1日の中でどこをどう動くかも念入りに決めていました。
稀ですが写真などをお願いされたときには、それにもしっかり対応しなくてはいけません。
喋るゆるキャラのような立ち振る舞いはできませんから、ボディランゲージを上手に使ってコミュニケーションを取ります。
休憩はお昼休憩と夕方休憩の2回ありました。しかしお昼や夕方は一番客足が多い時間ですから、実質お言葉に甘えて休める時間などありません。昼食タイムとトイレ休憩以外は、ほぼ働きっぱなしの状態でした。
この仕事できつかった事
まずは、想像以上に重労働でした。夏場は暑く、濡らしたタオルを首に巻いて働きます。着ぐるみは意外と軽いのですが、視野が狭く歩くコツを掴むのにも時間が掛かりました。
それから会社の方からは、何もしない時間を作るなと言われていました。着ぐるみは目立ちますから、ぼーっと立っているとすぐにバレます。特別役割を与えられていないときでも売り場を歩き回って、買い物客に手を振っていました。
トイレに行くタイミングも、かなり難しいです。急に行きたくなるときがあっても、わざわざ専用の控え室まで戻って着ぐるみを脱がなければいけないのです。働き始めのときは、13時間トイレに行かず着ぐるみを着ていました。今振り返るとよく我慢できていたなと思います。
子どもたちに囲まれると、嬉しい反面大ピンチに陥ります。何故なら子どもたちは容赦なく、着ぐるみの上から叩いてきたりするからです。これが結構痛くて、何度も声が出そうになりました。
チラシなどを配るときには、着ぐるみの手で紙を1枚単位で持つのが大変でした。持ちやすいからといって折ってしまってはいけませんし、その中でスムーズに多くの買い物客に渡す必要があります。もしかしたら、これが一番苦労した点かもしれません。
この仕事で良かった事
あくまで体感ですが、体力が非常についたと思います。
それと自分の姿を隠したまま働けるので、何か生まれ変わったような気分で仕事ができました。チラシ配りも、自分の性格を考えれば普段は避けたい仕事です。それを積極的に取り組めたのは、紛れもなく気ぐるみパワーのおかげでしょう。
イベントステージでは、自分のちょっとした振る舞いに皆さん笑ってくれます。例えば何かに躓いて転びそうになったとき、生身のままだと笑い事にはなりません。それが着ぐるみを着ているおかげでユーモアに変わり、寧ろドジな一面が長所になる場合もありました。
子どもたちと触れ合えるのも、楽しかったです。私がもともと子ども好きというのもあるでしょうが、やはり無邪気に集まってくれる様は微笑ましいです。風船を渡した際の沢山の笑顔は、今でもしっかりと覚えています。
社会経験としても、良い経験ができました。それまで見たことのなかったショッピングモールの裏側を見て、どれだけの人が一生懸命に働いているのかを知りました。気ぐるみを着て売り場を回っていると、いつしかここで働く全員が仲間なのだと思えていました。大変だけれどそれ以上に幸せ、着ぐるみ士を経験してそう感じられました。
この仕事を辞めた理由
就職活動が始まったのが、辞めた一番の理由です。
それと同時にイベントスタッフの入れ替えが始まり、慣れ親しんだ社員さんたちが現場を離れてしまったのも大きいです。
そもそも私がこの仕事の募集要項を見たときには、短期アルバイトという位置付けでした。それが気が付くと1年以上雇っていただき、私の中ではもう十分働けたのかなという思いもあった気がします。
トイレのことや夏場の暑さ、常に何かをしていなければならないプレッシャーなど、本音を言えば辞められてホッとした部分はあります。就職活動のためとなれば辞めるには十分な大義名分ですし、後ろめたさなく辞められたのは良かったです。
この仕事が向いている人
言葉を発さずとも表現力が豊かな人、子どもが好きな人、こういった人たちは間違いなく向いています。
それから人見知りで恥ずかしがり屋な人も、挑戦してみると自分を変えられるかもしれません。
私は後者の方で、小さい頃から極度の人見知りをする子どもでした。
更に臆病な性格でもあり、自分を前に出すことは今でも決して得意ではありません。しかし着ぐるみを着ていると、全く違う自分になれるのです。
この仕事は、ある意味物凄く匿名性の高い仕事だと思います。
どれだけ弾けて奇抜なキャラクターを演じても、他の買い物客に自分の本当の姿は見えません。今の自分を変えたい、そう常に考えている人には是非働いてみてほしいです。
接客スキルを身に付けたい人も、きっと向いているでしょう。
私は売り場を回っていて、沢山の販売員の方を見ました。こういうところは勉強になるぞと、参考にさせてもらったことも山ほどあります。他人の仕事を観察することにも、着ぐるみ士は長けているなと感じました。
この仕事に就きたい人へ一言
楽しさと大変さと、どちらも同じくらいにある仕事です。
興味本位だけで始めると、早々にリタイアしてしまう可能性もあるでしょう。しっかりとどういう仕事なのかを理解して、覚悟を持って臨むことをおすすめします。